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いつかの一枚のために
いつかの一枚のために
Penulis: 吉乃婆婆

第1話 突然の試練

Penulis: 吉乃婆婆
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-30 11:38:56

安藤涼禾(あんどう すずか)は五年前に何らかの事件に巻きこまれて記憶を失った。

当時、彼女が目覚めた時には、頭と体にたくさんの傷を負っていた。意識が戻ったことに気付いた医師や看護師に名前や身元を尋ねられたが、肝心なことはほとんど思い出せなかった。

彼らによると、彼女はある山の登山道脇の河原に倒れていたのを、通りかかった登山者たちに救助されてきたそうだ。周囲には荷物もなく、持ち物らしき物も落ちていなかったらしい。そして3日間も眠り続けていたそうだ。驚きと不安で混乱する彼女に、医師はさらなる衝撃の事実を告げた。

「あなたは今、妊娠しています。ほぼ第5週くらいかと思われます。お子さんは、今回は奇跡的に無事でした。」

鈍い頭痛に加え、体のあちこちに痛みが続く中、なぜ?どうして? と、とりとめのない思いが心にさらなる痛みを加えていく。心身ともに傷付き高熱も発した為、ただひたすら養生に専念し、2週間が過ぎた。そんな中でもお腹の子供は順調に成長していった。

今は緊急保護ということでここで治療を受けさせてもらっている。

これから、自分一人生きていくことすらままならないのに、更に子供を産み、育てて行くなんて無理に決まっている。いつまでもここにもいられない。やはり子供は諦めるべきだろう。でも、もし、自分も父親も待ち望んだ子供だったとしたら?ここで諦めてしまえば一生後悔することになる。そうでなくとも探せば何とか子供と生きていける方法があるかもしれない。体のためには早く決断したほうが負担は少ないだろう。しかし、心はそれを受け入れられない。もう少しもう少しだけ考えてから決めよう。

私は一体どうすればいいのだろうか。

体の回復に反して心はどんどん落ち込んでいく。

その日も、今だに残る体の痛みと不安に襲われながら無為に時を過ごしていた。

すると、病室のドアを静かに叩く音がした。続いて、やや年配の女性の優しげな声がかかった。

「こんにちは、少しいいかしら?」

「?………はい、どなたですか?」

ゆっくりとドアが開き、声と同様穏やかな表情をした50代位の女性と同年代位の、やはり穏やかな雰囲気の男性が入ってきた。

「突然ごめんなさい。実は、少し前からあなたに会いに来たかったのだけれど…、お医者様からもう少し落ち着くまでって許可がおりなくて。」

「………?」

「あっ、私は安藤佐和子と申します。こちらは夫の徹です。私たち、山であなたを見つけて連絡したの。その後、あなたが記憶をなくして身元不明のままだって聞いて。どう?何か手がかりはみつかった?」

「あっ、その節はありがとうございました。私ったら自分のことしか考えていませんでした。今までお礼も言えずに失礼しました。残念ながら、まだ何もわからないままなんです。」

「そう、大変ね。体の方は?まだ痛みとかあるの?」

「そうですね。まだ暫くは思うようには動けないようです。いろいろ考えなくてはいけないこともありますし。」

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